(1907年6月6日 萬朝報)
弁護士会の会長選挙は、菊池武夫を推す「協会派」と、磯部四郎を推す「非協会派」との対立となり、昨日ついに決戦の日を迎えた。会場となった本郷座では、その争いの様子がまるで芝居のように激しく、高田一派の演劇以上の騒ぎであった。当日の様子を記す。
■本郷座前の警備
本郷座は翌日から雲右衛門の浪花節興行が予定されており、華やかに装飾されていたが、入口は幅の広い正面を板で二重にふさぎ、わずかに二人ほど通れる隙間だけを出入口として、万一の事態に備えていた。まるで嵐が来る前のような緊張した雰囲気であった。
(後略)
⚫︎ 弁護士会内部の派閥対立
この事件は、単なる選挙ではなく、弁護士会内部の深刻な派閥抗争を示しています。
⚫︎ 「協会派」と「非協会派」
対立の構図は:
- 協会派(制度重視・既存組織寄り)
- 非協会派(反主流・改革志向)
いわば「体制派 vs 反体制派」でした。
⚫︎ なぜここまで激化したのか
当時の弁護士は:
- 近代法制度の担い手
- 社会的影響力が急拡大
していました。(会長職=強い権力)
そのため:
- 利益 - 人事 - 政治的影響力
をめぐり対立が激化しました。
⚫︎ 「劇場」での選挙という異様さ
会場が本郷座であったことも象徴的です。
当時は:
- 公的施設が未整備
- 大規模集会は劇場で実施
しかし結果的に、本当に“芝居のような騒動”になりました。
⚫︎ 暴力化寸前の政治文化
入口を封鎖し警戒している描写は、衝突・乱闘の危険を示します。
これは:
- 明治期の政治文化
- 直接行動・群衆政治
の特徴でもあります。
⚫︎ 近代日本の「法」と現実
興味深いのは、法を扱う弁護士自身が混乱状態である点です。
これは、
- 制度は近代化
- 社会はまだ過渡期
というギャップを象徴します。
⚫︎ まとめ
- 弁護士会会長選をめぐり激しい派閥争い
- 菊池武夫派 vs 磯部四郎派
- 会場は劇場で、厳重警戒の異様な雰囲気
- 近代法制度の担い手内部でも対立が激化
- 明治期の政治文化の未成熟さを反映
これは「近代制度と現実社会のギャップ」を示す象徴的事件といえます。

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