(1907年1月13日/中外商業新報)
【東京株式市場は大荒れ】
連日の熱狂的な値上がりを続けてきた各銘柄は、翌日に休場日を控えていたこともあり、利益確定の売りに押されて一時的に値動きが緩んだ。もっとも、市場の人気(投機熱)が完全に落ち着いたようには見えず、過熱した相場が急に冷え込む気配はなかった。
投資家は新しい銘柄を求めて次々と資金を移し、なかにはこの機会を利用して、意図的に買いをあおる投機家もいたようである。その結果、小田原電気鉄道、京浜電気鉄道、横浜電気をはじめ、日本郵船や麦酒(ビール)会社などが相次いで暴騰し、商品株は二百十円という異例の高値にまで進んだ。
一方、東京株式(旧株)は再び十八~十九円ほど急騰したが、新株は前日の異常な高騰の反動で、かえって十円ほど値を下げた。こうして商いはやや静まりつつあるなかで、この日の取引は終了した。
写真・図引用:https://www.keikyu.co.jp/history/chronology01.html?utm_source=chatgpt.com
◾️ 明治末期の「株式投機ブーム」
1906~1907年(明治39~40年)は、日露戦争後の好況と資本市場の拡大を背景に、株式投機が過熱した時期でした。鉄道・電力・海運・ビールといった「成長産業」が人気を集め、短期間で株価が急騰・急落する現象が頻発しました。
◾️ 「狂奔」「狂騰」という表現
記事中の「狂奔」「狂騰」という言葉は、当時の新聞が異常な投機熱を批判的に描写する際によく使った表現です。合理的な企業価値よりも、「値上がりしそうだ」という期待だけで売買が繰り返されていたことを示しています。
◾️ 電鉄・インフラ株の人気
- 京浜電気鉄道や横浜電気などは、都市化・電化の象徴的企業
- 日本郵船は国策的な海運会社
- 麦酒会社(日本麦酒=のちのキリン)は近代消費文化の代表
これらは「日本の近代化=成長」を体現する銘柄として、投機資金が集中しました。
◾️ 旧株と新株の差
同じ会社でも
- 旧株:発行済みで流通量が限られる
- 新株:増資などで新たに発行
という違いがあり、需給関係から値動きが逆転することも多く、この記事はその典型例を伝えています。
◾️ まとめ
- 明治末期の東京株式市場は、投機熱が極度に高まった不安定な状況にあった
- 鉄道・電力・海運・ビールなど、近代化を象徴する産業株が集中的に買われた
- 利益確定売りで一時落ち着きつつも、過熱相場はなお続いていた
この記事は、日本における近代資本市場の未成熟さと投機の危うさを生々しく伝える史料である。

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