(1906年3月13日・官報)
朕(ちん/天皇)は、帝国議会の承認を経た明治39年度の一般会計歳入・歳出総予算および特別会計の歳入歳出予算を裁可し、ここに公布する。
御名御璽(天皇の署名と印)
明治39年(1906年)3月12日
内閣総理大臣・公爵 西園寺公望
大蔵大臣・法学博士 阪谷芳郎
【予算内容】
第一条
明治39年度歳入総額を 4億8,879万8,572円 とし、歳出総額も同額とする。その内訳は別冊 歳入予算・歳出予算(甲号) による。
(中略)
第四条
明治39年度に発行する大蔵省証券の最高額を 5,000万円 とする。
(以下省略)
● この年度はどんな時期か?
明治39年度(1906年度)は 日露戦争(1904–05)終結直後 の年度であり、その主な政策課題は次の3点でした。
政策分野 主要内容
戦後処理 経費償還・軍備整備の再編・復員処理
経済財政 赤字予算+国債発行での財政運営
国家基盤 鉄道国有化、殖産興業、植民地経営強化
特に 戦費の総額は約18億円 と見積もられ、国家財政史上未曾有の負担となりました。
● 予算規模の歴史的位置
年度 一般会計規模 備考
明治30年度 約1.1億円 日清戦争後
明治37年度 約5.6億円 日露戦争中の軍事膨張
明治39年度 約4.8億円 戦後だが依然高水準
戦費ピークよりは縮小したものの、依然として国家予算は高水準であり、「戦後であっても軍事支出を急には減らせない」構造を反映しています。
● 国債(大蔵省証券)発行の重要性
本文第4条の 「発行限度5,000万円」 は、戦後財政運営を国債依存で行う方針の一部です。日露戦争中、日本は 対外債務(外債) を大量に発行し、主な購入者は 英国・米国の金融市場 でした。
このため戦後の財政方針には次の課題が存在していました:
• 国の信用維持
• 外債返済負担への対応
• 金本位制維持方針との整合
● この予算の特徴まとめ
重点分野 内容
戦後整理 軍事費・復員費・賠償処理
国家事業 鉄道国有化・産業政策・満洲経営支出
財政運営 国債依存・財政規模の「高止まり」


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