(1906年5月9日 読売新聞)
煙草専売局では、現在、清国(中国)において日本の煙草の強力な競争相手となっている英米煙草トラストの事業の動向を踏まえ、さらに将来需要が増大すると見込まれる清国・韓国・沿海州方面の市場に対応するため、今後十年をかけて、少なくとも現在の五倍の製品を生産し、海外各地の需要に応じようとする計画を立て、目下さまざまな調査を進めているという。
◾️ 煙草専売局とは
煙草専売局は、1904(明治37)年に設置された国家専売機関で、
・煙草の製造・販売を政府が独占
・安定した税収を確保
することを目的としていました。特に日露戦争期には、軍事費調達の重要な財源となりました。
◾️ 清国市場と英米煙草トラスト
当時の清国では、英米煙草トラスト(British-American Tobacco, BAT)が巨大資本と流通網を背景に市場を席巻していました。
日本の煙草は、品質面では評価されつつも資本力・宣伝力でBATに劣るという状況にありました。
この記事は、専売局が国家の力を背景に海外市場へ本格参入しようとしていたことを示しています。
◾️ 「清韓沿海州」という地域指定の意味
記事にある
・清国(中国)
・韓国(当時は大韓帝国)
・沿海州(ロシア極東)
は、いずれも
・日本の政治的・経済的影響力が急速に強まっていた地域
・日露戦争後の勢力圏拡大と直結
しています。
煙草専売局の海外展開は、単なる商業活動ではなく、国策的な経済進出でした。
◾️ 十年計画・五倍増産の意味
「十年計画」「五倍増産」という表現は、
・近代的な長期経営計画
・工場増設・技術改良・原料確保
を前提とするもので、当時としては非常に野心的な構想でした。
これは、日本が国家主導で欧米の巨大企業に対抗しようとする姿勢をよく表しています。
◾️ 日本の「専売国家」化の流れ
煙草専売はその後、
・専売益金の増大
・財政の安定化
に大きく寄与し、日本は「専売制度を持つ近代国家」としての体制を固めていきました。
海外市場を視野に入れたこの記事は、その制度が国内向けにとどまらず、帝国経済の一部として構想されていたことを示しています。
◾️ 総括
この記事は、日露戦争後、日本が国家の力を背景に海外市場へ進出しようとする経済戦略を象徴するものです。
煙草という嗜好品を通じて、
・欧米資本との競争
・中国・韓国・ロシア極東への影響力拡大
が図られようとしていたことが、短い記事の中に凝縮されています。


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