1908年03月02日 巌谷小波の……『世界お伽噺』完成

1908年

(1908(明治41)年3月3日、『読売新聞』)
 「お伽噺界のおじさん」として知られている巌谷小波氏は、前後9年間をかけ、このほど『世界お伽噺』全100編を完成した。同書は総ページ数7,000ページにのぼる稀有の大事業であり、同時に児童教育界に貢献した功績も少なくない。そこで今回、同氏の知人や門人たちが相談し、その功労に報いるため、『お伽花籠』と題する美しい一冊の本を出版して、巌谷氏に贈ることになったという。その執筆者は、吉岡文学士、窪田中監、高野斑山、武田桜桃、黒田湖山、木村小舟、沼田笠峰、竹貫佳水、西村渚山、福田琴月の10氏であるという。

記事引用:https://dl.ndl.go.jp/pid/1920436/1/219

写真・図引用:https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000007332593

◾️『世界お伽噺』とは

巌谷小波の『世界お伽噺』は、博文館から刊行された大規模な児童向け説話集です。世界各地の昔話、伝説、神話、物語などを子ども向けに再話したもので、全100編に及びました。

東京都立図書館は、このシリーズを1899~1908年刊行の全100冊と紹介しています。国立国会図書館にも各編が所蔵され、第100編まで1908年に刊行されたことが確認できます。

記事の「前後九年間もかゝりて」という表現は、この長期にわたる刊行期間を指しています。

◾️巌谷小波と明治の児童文学

巌谷小波(1870~1933)は、明治期を代表する児童文学者です。尾崎紅葉らの硯友社に参加したのち、『こがね丸』や『日本昔噺』などを発表し、博文館の『少年世界』主筆としても活動しました。国立国会図書館は、小波を昔話や伝説を再話・集成して普及させた「近代児童文学の生みの親」と位置づけています。

当時は現在の「童話」よりも「お伽噺」という呼称が一般的で、小波はその中心的人物でした。

◾️記念出版された『お伽花籠』

記事にある『お伽花籠』は実際に刊行されています。国立国会図書館の書誌では、1908(明治41)年3月、博文館刊、299ページで、木村小舟著として登録されています。記事が掲載されたのも同年3月3日であり、まさに刊行時期と一致します。

記事は『世界お伽噺』100編完成を単なる出版上の成功ではなく、「児童教育界」に対する功績として評価している点も注目されます。

◾️ まとめ

この記事は、巌谷小波が約9年間をかけて『世界お伽噺』全100編を完成したことを祝う短い文化記事です。

全体で約7,000ページという巨大なシリーズを完成させたことに対し、知人や門人らが記念本『お伽花籠』を編み、小波へ贈ろうとしていました。

『世界お伽噺』は、世界各地の物語を日本の子どもたちに紹介した明治児童文学の代表的事業の一つです。記事がこれを「稀有の大業」と表現していることからも、同時代において小波の仕事が児童教育・児童文学双方で高く評価されていたことが分かります。

コメント