エネルギー基本計画とは

エネルギー

 12月に入って本格的な寒さがやってきましたね。

 世の中は色々なものの値上げが続いていますが、2%程度のインフレがデフレを回避しつつ失業率が最も低い水準になるので最適なのだそうです。インフレに遅れつつも賃金が上がってくれれば、高度成長期のようにみんな前向きに頑張れるので、そんな正のスパイラルに転換できれば良いなと思っています。

 明治時代の新聞の翻訳も始めてから早2ヶ月を超え、軌道に乗ってきましたように思いますので、徐々にではありますが、他に興味があることや整理しておきたいことに取り組んでいけたらと思っています。

 ということで、唐突ですがエネルギー政策についてまとめていきたいと思いますので、よければこちらも読んでみてください。

◾️ 「エネルギー基本計画」とその策定背景

  • 日本は資源に乏しく、多くを輸入に頼る国であるため、エネルギーの安定供給、価格・資源安全保障、経済効率性、環境適合性などをバランスさせた長期的なエネルギー戦略が必要とされてきました。
  • こうした状況を踏まえ、2002年に成立した エネルギー政策基本法 により、国は「エネルギー基本計画」を策定する義務を負い、少なくとも 3 年ごとに見直すこととなりました。
  • 以後、2003年に第1次が策定され、その後 3–4 年ごとに改定が行われ、第7次(最新版)は 2025年2月に閣議決定されました。
  • エネルギー政策の基本理念は「S+3E」(Safety/安全性、Energy security/安定供給、Economic efficiency/経済効率性、Environment/環境適合性)であり、これを維持しつつ、時代の要請(脱炭素、再生可能エネルギー拡大、エネルギー安全保障など)に応じて内容が刷新されてきました。

◾️ 各基本計画の変遷と概要(第1次〜第7次)

以下に、第1次から第7次までの大まかな流れと、それぞれの特徴を整理します。

回次背景・目的・特徴
12003年10月「エネルギー政策基本法」に基づく初の基本計画。
省エネルギーの強化、多様なエネルギー源の確保
(原子力、新エネルギー、ガス、石炭など)、
電気・ガス事業制度改革などを位置づけ。
22007年3月第1次後のエネルギー環境の変化を踏まえ、核燃料
サイクルの推進、新エネルギー支援の加速、石油等の
資源安定供給のための総合戦略強化などを展開。
原子力を含む多様な電源を重視。
32010年6月従来の基本計画を全面的に見直し。
これまでの「3E(安定供給・経済効率・環境適合)」に
加えて、「エネルギーを基軸とした経済成長」の明記。
2030年に向けた数値目標を初めて提示。
42014年4月2011年の 福島第一原子力発電所事故 を踏まえ、
安全性(Safety)を最優先とする「S+3E」を明確化。
原子力の扱いや再生可能エネルギーの推進、火力の
見直し、エネルギー安全保障と環境対応のバランス、
といった新たな指針を示す。
52018年7月「さらに高度な 3E+S」を目指す。
特に「脱炭素化」、「エネルギー選択の多様性」、
「技術自給率の確保」、「産業競争力の維持・強化」を
重視。
2030年の電源構成(エネルギーミックス)を明確に設定。
62021年10月2050年カーボンニュートラル宣言(および2030年
温室効果ガス削減目標)を受け、再エネ拡大と原子力の
一定維持、火力の見直し、省エネの強化と、将来の
エネルギー安定供給を両立させる構成。
2030年を主なターゲットとした見通し。
72025年
(閣議決定)
近年の急速な社会・国際環境の変化(地政学リスク、
エネルギー安全保障、電力需要の増加、脱炭素要請など)を
受け、2040年を見据えた長期ビジョン。
再生可能エネルギーを主力電源と位置づけ、原子力と
再エネの両輪で脱炭素と安定供給を両立させる構成。

◾️ 電源構成比率(エネルギーミックス)の変化

 以下は、各基本計画で目指された、または想定された電源構成の主な数値(特に再エネ・原子力・火力中心)です。ただし、第1〜3次では電源構成比率の「2030年見通し」を示すことが主目的であったため、再エネ/原子力/火力ごとの構成比率までは必ずしも明文化されていません。

  • 第1次〜第3次
    • これら初期の基本計画では、「多様なエネルギー源の確保」、「原子力の活用」、「新エネルギーやガス、石炭の活用」などを基本方針としたが、電源構成比率の具体的な「再エネ○%、原子力○%、火力○%」という2030年ミックスの比率までは明示されていない。
    • 第3次では2030年に向けた長期目標が示されたが、直ちに詳細な電源ミックス数値を出す段階にはなっていなかった。
  • 第4次(2014年)
    • 第4次では、「安全性(S)」を最優先に据える指針へ変更。ただし、この時点では具体的な2030年の電源構成比率(再エネ・原子力・火力の割合)は、基本計画本文では「可能な限り原子力依存を低減」、「再生可能エネルギーの最大限導入」といった文言にとどまり、数値目標は基本計画単体では示されず。実際の「2030年エネルギーミックス」は、後年の「見通し」で示されることになります。
  • 第5次(2018年)
    • 2030年の電源構成見通しとして、以下を目指すことが設定されました。
      • 再生可能エネルギー(再エネ): 22〜24%
      • 原子力発電: 20〜22%
      • 化石燃料(主に火力): 残り(おおよそ 56%)が目安とされていた。
  • 第6次(2021年)
    • 第6次では、2030年をターゲットとした電源構成見通しが引き継がれました。具体数値としては、再エネおよび原子力の比率が上記第5次の想定と同様の水準で示されていました。
    • また、カーボンニュートラル(2050年)に向け、省エネ、電化、非化石電源への転換などが強く打ち出されました。
  • 第7次(2025年)
    • 最新の基本計画。2040年時点の電源構成見通しとして、以下を提示。
      • 再生可能エネルギー(再エネ): 40〜50%程度(主力電源化)
      • 原子力発電: 約 20%程度
      • 火力発電(化石燃料): 約 30〜40%程度
    • 再エネのうち内訳も示されており、例えば太陽光は 23〜29%程度、風力は 4〜8%程度。水力、地熱、バイオマスなども含めて再エネ全体で 40〜50%を構成。
    • また、第7次では、以前の「可能な限り原発依存度を低減する」という文言を削除し、再エネと原子力の両輪で「脱炭素&安定供給」を図るという転換が明確に打ち出されました。

◾️ なぜ変遷してきたか ― 背景と時代要因

  • 第1次〜第3次では、エネルギー供給の安定性と多様性を重視。まだ脱炭素の議論は現在ほど強くなかった。原子力、新エネルギー、ガス、石炭を含む多様な電源構成を基本方針とした。
  • 第4次は、2011年の福島第一原発事故が転機。安全性 (S) を最優先に据えた「S+3E」の枠組みへ転換。原子力の扱いや再生可能エネルギーの拡充、安全性の確保が重視されるようになった。
  • 第5次・第6次では、脱炭素化の国際的な圧力(地球温暖化対策、パリ協定など)や、2050年カーボンニュートラル宣言、国内外の気候・エネルギー政策の転換を背景に、再エネ拡大、火力抑制、省エネ、原子力の安全な維持、などをバランスさせる方向。
  • 第7次では、さらに進んで、再エネを「主力電源」と位置づけ、2040年の電源構成で再エネ 40〜50%、原子力 約 20%、火力 約 30〜40%を目指す大胆な構成を採用。これは、昨今の地政学リスク(エネルギー安全保障)、世界的な脱炭素競争、DX/GX/デジタル化による電力需要増、産業競争力確保などを総合的に勘案したもの。

◾️ 第7次エネルギー基本計画の特徴と今後の論点

  • 第7次では、再生可能エネルギーを「主力電源」と宣言したうえで、原子力も並列に活用する「再エネ+原子力」体制を明示。過去の「原発依存減」の文言を削除。これにより、脱炭素化と安定供給の両立をねらう。
  • また、再エネの大量導入に伴う不安定さ(変動性)、系統制約、調整力の確保、省エネ・電化・非化石化などを組み合わせることで、全体としての電力の安定供給とコスト・環境・安全のバランスを取る設計。
  • ただし、2040年に再エネ 40–50%という目標は、技術的・制度的なハードル(系統整備、蓄電、出力変動対策、送配電インフラ、需給バランス、コストなど)が多く、実現可能性と追実性が今後の大きな論点とされています。

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